第92章 交通事故

その日の午後、西川安菜は学校に連絡して早退扱いにしてもらった。

阿部蓮太郎という名は、臨市ではそれなりに知られている。ネットで検索すれば、断片的な情報くらいすぐ出てきた。

安菜は阿部グループの所在地を突き止めると、タクシーを拾って一直線に向かう。

阿部グループは臨市の金融センターにある。周囲はスーツ姿の人間が絶えず行き交い、ここで阿部蓮太郎を捕まえるのは、正直言って骨が折れる。

それでも――運が味方した。

安菜は、ちゃんと「待てた」のだ。

午後4時。まだ退勤ラッシュには早い時間帯。広いロビーには人影がまばらで、エアコンの音だけがやけに響いていた。

そこへ、すらりとした長身の男が...

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